職場で褒められても「いつか自分の無能さがバレるのでは」と不安になる人——共通する課題
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仕事をすること自体が基本、私は怖かった。
誰かに期待されるのも怖いし、失敗を糧に成長したい——なんてガラでもない。常に「いつかどうせ失敗する」と考えていただろう。
私は20代の間、何度も転職した。
前向きなものではない。いつも私は、自分がこの場にいるべきではないと考えてしまうことが多かった。また、「周りから見える自分」がどんな状態なのかを気にしていた。
新しい職場に入ったとき、私はいつも「仕事ができるフリ」をしてしまう。
快活な挨拶を心がけ、前向きに仕事に取り組む。どんな人とでも分け隔てなくコミュニケーションをとった。自分で言うのもなんだが、よく周りに私は期待されていただろう。
「いい人が入ってくれたね」
「これからが本当に楽しみだ」
上司は私の肩にやさしく手を添え、にこやかな表情を浮かべている。
私は恐ろしかった。
いずれ自分が無能だとバレてしまうこと——そのカウントダウンが初日から始まっていた。
◾️インポスター症候群——無能さが露見する不安
職場に入ってから、私は毎分毎秒、周囲と自分を比較し続けていた。
優秀な人はどの職場にも必ずいた。若い人で、仕事をものすごくこなしている人も。
自分には一体何ができるのか。必死に考えた。
私にやれそうな仕事なら、とにかく請け負った。そこで、いわゆる「成功体験」が訪れても、私は素直に喜べなかった。なぜなら、「自分には実力がない」という前提(自己イメージ)が心の奥底にあったから。
仕事が上手くいっても、ただ運がよかっただけ、周囲が手助けしてくれたからに過ぎないと思ってしまう。こんなことは誰でもできる、当たり前のことだとも考えていた。
そんな私を見て、上司は言った。
「もっとあなたは自信をもっていいんだよ」
そう言われても、その言葉通りに受け取れない。だって私は、あれもできないし、これも未熟だし、と考えてしまう。考えてしまう、というより、動かぬ事実だと感じていた。
当時は気づけなかったが、私の中で「自分を過小評価する癖」があっただろう。
そして今振り返ると、私は「インポスター症候群」に陥っていた。
インポスター症候群の代表的なサインとして、次のような思考パターンが挙げられる。
あなたの中でも、当てはまるものがあるだろうか。
・自分の能力のなさが、いつか周りにバレてしまうのではないか?という恐怖
・周囲からの評価や賞賛が高まるほど、それがプレッシャーや不安へと変わる
・「次は手痛い失敗をするに違いない」という予感に囚われる
・現在のポジションや役割に対して、「自分には不相応だ」という引け目を感じる
・何か成功しても、運が良かっただけと思う
——インポスター症候群を引き起こす要因の一つに、
「自分が自覚している能力」と、「理想の自分や周囲から寄せられる期待」との間にある乖離(ギャップ)が挙げられる。
自己肯定感が希薄な人は、自分の実力を本来よりも著しく低く見積もる傾向がある。それだけでなく、「周りも自分を無能だと思っているに違いない」という思い込みに囚われやすい。
その結果、周囲からの批判や否定によって心が傷つくのをあらかじめ防ごうとして、自ら「自分には力がない」と過度にへりくだるようになる。この自己防衛の姿勢が、さらなる自信喪失を招く負の連鎖を生み出してしまう。
過去、私の中で「自分は仕事ができるふりをして周囲を騙している詐欺師(インポスター)だ」という感覚が生まれていただろう。
「インポスター症候群」は、名前に“症候群”とついているが、これは医学的な精神疾患には分類されない。
とはいえ、自身の能力への不安感や、“偽りの自分”を演じるプレッシャーは、働く上での妨げになると同時に、抑うつ症状やうつ病の原因にもなり得る。
自身の成功を信じられない「インポスター症候群」は、性別を問わず多くの人が直面する問題だ。ある研究によると、実に全体の約7割もの人が、人生で一度はこのような心理状態を経験するとも言われている。
これを読んでくれているあなたも、「どうしても自分に自信が持てず、いつかこの化けの皮が剥がれてしまうのではないか」と、薄氷を踏むような緊張感の中で働いているかもしれない。
期待を裏切りたくない、けど、自分に能力があるとは思えない——そんな焦りを抱えているかもしれない。
ただこれは、決してあなた一人きりの孤独な戦いではないということだけは、心のどこかに留めておいてほしい。
このインポスター症候群の苦しさをゆるめるためには、まず自分が「こういう思考パターンに陥っている」と気づくことが何より重要だ。
そして、私たちの課題は、「自分に能力がないこと」ではなく、「答えの出ない問いに、答えを出そうとし続けていること」にある。



