やる気を潰さず人を育てる怒り方
「何回言ったら分かるんだ」 「やる気あるの?」 「もういい。自分でやる」
言った側は指導したつもりでも、言われた側に残るのは「次は失敗を隠そう」という気持ちかもしれない。
ただ、相手が傷つくのを恐れて、何も言わないのも違う。 直した方がいいことを伝えなければ、本人は同じ失敗を繰り返してしまう。
大切なのは、必要なことを伝えながら、もう一度挑戦できる気持ちを残すこと。
そのために意識したいことが、5つある。
① 人格ではなく、具体的な行動を指摘する
「お前は無責任だ」 と言われても、何をどう直せばいいのか分からない。
伝えるなら、 「遅れると分かった時点で、連絡がほしかった」
直してほしいのは、その人の性格なのか。 それとも、今回の行動なのか。
ここを混ぜないこと。
「いつもそうだよね」 「だからお前はダメなんだ」
こうした言葉は、過去の努力まで否定されたように響く。
指摘は具体的にするほど、相手が改善に移しやすくなる。
② 決めつける前に、事情を聞く
同じミスでも、原因は同じとは限らない。
手順を知らなかったのか。 優先順位に迷ったのか。 仕事を抱えすぎていたのか。
原因が違えば、必要な対応も変わる。
「なんでできないの?」 と責める前に、
「どの段階で止まった?」 「どう判断して進めた?」
と聞いてみる。
話を聞いた結果、自分の説明不足が見つかることもある。
事情を聞くことと、失敗を見逃すことは別。 理解したうえで、守ってほしい基準を伝えればいい。
③ 人前で恥をかかせない
みんなの前で強く叱ると、相手の頭が「どう直すか」より「この場をどうやり過ごすか」でいっぱいになることがある。
だから、改善の話はできるだけ一対一で。
「さっきの件、次に向けて少し話そう」
この一言で場所を変えるだけでも、向き合いやすくなる。
危険な行動は、その場ですぐ止める。 ただし、その後の説明に、見せしめや屈辱は必要ない。
厳しく伝えることと、恥をかかせることを混同しない。
④ 「ちゃんとやれ」で終わらせない
「気をつけろ」 「もっと考えろ」 「責任感を持て」
どれも、次に何をすればいいのかが曖昧だ。
人を育てたいなら、改善を行動に落とす。
「提出前に、日付と金額を確認しよう」 「納期が厳しいと分かったら、その日のうちに相談して」 「迷ったら、作業を進める前に一度確認して」
そして、 「次はどう進めれば防げそう?」 と本人にも考えてもらう。
反省の深さを測るより、次の行動を一緒に決める。
うつむいて「すみません」と言えることより、同じ失敗を防げることの方が大事だ。
⑤ 改善した後まで、ちゃんと見る
叱るときだけ関わって、直した後は何も言わない。
それでは相手に、 「この人は、できていないところしか見ていない」 と思われても仕方がない。
前より早く相談できたなら、
「今回は早めに言ってくれたから、対応できた。ありがとう」
確認ができていたなら、
「前回話したところ、直っていたね」
と、変化を具体的に伝える。
人を育てる指導は、叱った瞬間ではなく、改善を確かめるところまで続く。
最後に、忘れたくないことがある。
「期待しているから怒っている」は、言う側だけで決められる言葉だ。
期待しているなら、質問に付き合う。 任せるなら、必要な支援をする。 自分の言い方が悪ければ、謝る。
そこまで行動で示して、初めて言葉に説得力が生まれる。
怒りを感じることはある。 でも、その勢いのまま相手にぶつける必要はない。
伝えるべきことは曖昧にしない。 それでも、その人の可能性まで否定しない。
「もう怒られたくない」だけで終わらせず、 「次はこうしてみよう」を残せる人でありたい。


