集中力を「超回復」させるHIITトレーニング
本を2時間ほど読み続けていると、目は文字を追っているのに内容が頭に入ってこなくなる瞬間がやってきます。同じ行を3回読み直して、それでも意味がとれません。 以前の僕はここでコーヒーを淹れ直したり、スマホを眺めて休憩したつもりになったりしていたのですが、正直なところ、どちらも大した「回復」にはなりませんでした。
そういうとき、僕は本を閉じてHIITトレーニングをすることにしています。
HIITというのは高強度インターバルトレーニングの略で、短い全力運動と短い休憩を交互に繰り返すやり方です。僕の場合は柔術トレーニングの心肺機能補強として始めたのがきっかけだったのですが、子どもが産まれてからは柔術練習が減り、主にこのHIITを中心に筋力、心肺機能そして体型を維持しています。
HIITのメニューは人によりさまざまですが、僕はバーピージャンプとマウンテンクライマーを主軸にして、30秒やって15秒休む、これを8回繰り返して1セットとしています。1セットはちょうど6分。これを2セットほどやるので、合計しても12分程度です。(逆に言うと、一度にこれ以上できるのであれば「高強度」ではないと考えてます。)
12分でどのくらいのカロリーを使っているのか、気になって調べたことがあります。国立健康・栄養研究所が公開している「身体活動のメッツ表」を見ると、「高強度インターバルトレーニング:バーピー、マウンテンクライマー、スクワットジャンプ、タバタ式」という、まるで僕のメニューを見て作ったかのような項目があり、強度は11.0メッツとされていました。
メッツは安静時の何倍のエネルギーを使うかを示す数値で、消費カロリーは「メッツ×体重×時間」でおおよそ求められます。体重70キロの成人男性でHIITなら、11.0×70キロ×0.2時間で約154キロカロリー。おにぎり1個ぶんに少し届かないくらいの量を、たった12分で使いきる計算になります。朝夕と1日に2セットやれば、僕の体重なら300キロカロリー以上を消費できます。これでスナック菓子を一袋ぶんを消費できますね。
しかもHIITには「アフターバーン」と呼ばれるおまけがつきます。正式にはEPOC(運動後過剰酸素消費)といって、激しい運動のあとは、乱れた呼吸や体温や筋肉の状態を元に戻すために、運動を終えてからもしばらく体が普段より多くの酸素とエネルギーを使い続ける、という現象のことです。 ネットでは「HIITをやれば24時間脂肪が燃え続ける」といった景気のいい宣伝文句をよく見かけるのですが、調べてみると実態はもう少し地味なようです。
南オーストラリア大学の研究によれば、運動の強度が上がるほどEPOCは大きくなるものの、その量は運動そのもので使った酸素量の6〜15%程度にとどまり、ダイエットへの貢献に期待しすぎるのは禁物だそうです。
具体的に僕のHIITにあてはめれば、上乗せはせいぜい20キロカロリー前後。せいぜい飴玉1個か2個ぶんというところでしょうか。
さてさて、「154キロカロリー」という数字だけ見ると大したことがないように思えるかもしれませんが、やってみるとこれがきついんですよね。
特にバーピージャンプは、しゃがんで、脚を後ろに伸ばして、胸を床につけて、戻して、跳ぶ、という一連の流れを妥協なくやると、3回目の30秒あたりでだんだん太ももが言うことを聞かなくなってきます。
2セット目の後半ともなると、脚はバキバキで、息は上がりきっていて、さっきまで読んでいた本の内容など頭のどこにも残っていません。「あと何秒で終わるか」しか考えられません。
ところがこのあとにシャワーを浴びて机に戻ると、驚くほど本が読めますし、仕事にめちゃくちゃ集中できるんですよね。
さっきまで3回読んでも入ってこなかった段落が1回で理解できるし、著者の論理の流れを追いかける粘りのようなものも戻ってきます。
僕はこれを勝手に「脳活力の復活」と呼んでいます。
気のせいかもしれないと思って何度も「あいまのバーピージャンプ」を試しましたが、何度やってもスッキリ回復するので、いまでは読書や執筆の合間の決まりごとになりました。
シャワーも含めて一式、というのが僕なりのこだわりで、汗を流してさっぱりした状態で本を開くと、朝いちばんに机に向かったときの感覚に近いものが戻ってきます。1日のなかに「朝」をもう1回つくっているようなものだと思っています。
研究でも、「高強度インターバルトレーニングにより集中や思考の切り替えを担う部位の活動が高まる」という結果があるようでして、っていたそうです。リンク先研究の30秒を8回というのは奇しくも僕のメニューとほぼ同じ構成で、この論文を見つけたときは少しうれしくなりました。
もっとも僕自身の実感としては、脳の活動がどうこうというより「頭を強制的に空っぽにできる」ことのほうが大きい気がしています。


