新人が3ヶ月で戦力になる職場の共通点
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厚生労働省が毎年公表している数字があります。 新卒で就職した人のうち、3年以内に辞める割合です。 最新の令和4年3月卒で、大卒33.8%、高卒37.9%。 3人に1人が、3年経たずにいなくなっています。
新人が辞めるとき、多くの職場は理由を新人に求めます。 根性がない。合わなかった。最近の若い子は。
しかし採用と定着の研究を並べていくと、別の景色が見えてきます。 新人が戦力になるかどうかを分けていたのは、新人の資質ではありませんでした。 入社してからの90日を、職場がどう設計していたかでした。
米国の調査会社Gallupは、従業員に「自分の会社は新人の受け入れが上手だと強く思うか」と聞いています。 「強くそう思う」と答えたのは、わずか12%です。
つまり9割近い職場で、新人は「見て覚えろ」の中に放り込まれている。 そしてその結果を、新人の資質として処理している。
研究データと一次資料で裏が取れるものだけを5つに絞りました。 どれも、採用予算をかけなくてもできることです。
①初日に、会社の話より本人の話をさせている
新人が戦力になる職場は、初日を会社説明で埋めません。 先に、新人自身のことを話させます。
ロンドン・ビジネス・スクールのダニエル・ケーブル、ハーバードのフランチェスカ・ジーノらが、インドのIT企業ウィプロで行った実験があります。 2013年に『MIT Sloan Management Review』で発表されました。
ウィプロのコールセンターは、年間離職率が50〜70%。 研修は「会社の文化を叩き込む」ことに全振りしていました。
研究チームは新人を3つのグループに分けました。 従来通りの研修を受けるグループ。 それに加えて、会社の強みについて1時間考えるグループ。 そして、自分自身の強みについて1時間考えるグループ。
自分の強みを考えたグループは、入社6ヶ月以内の離職が32%以上減りました。 顧客からの評価も、他のグループより高かった。
変えたのは、初日の1時間だけです。
人は「会社に合わせろ」と言われた場所より、「あなたの持ち味はどこで使えるか」を聞かれた場所に残ります。
会社を語る初日は忘れられる。本人を語る初日は残る。
▶実践法 ・初日の面談で「これまでで一番うまくいった仕事は何か」を先に聞く。会社説明はその後でいい ・出てきた強みを1つ選び、最初の1週間の仕事のどこで使えるかを本人に伝える
②初週のうちに、上司が「何を期待しているか」を言葉にしている
新人が戦力になる職場は、期待を空気で伝えません。 初週のうちに、上司が自分の口で言います。
Googleで人事部門を統括したラズロ・ボック(※著書『Work Rules!』の著者)は、新人の上司に1通のメールを送る実験をしました。 新人が入社する直前の日曜日に、上司がやるべき5つの行動を書いて送る。それだけです。
内容は拍子抜けするほど単純でした。 役割と責任について話し合う。相談相手をつける。人脈作りを手伝う。半年間、月1回の面談を入れる。遠慮なく話せる関係を作る。
このメールを受け取った上司の下についた新人は、そうでない新人より25%早く一人前になりました。
Gallupの調査では、上司が受け入れに積極的に関わった新人は、そうでない新人に比べて「受け入れが素晴らしかった」と答える確率が3.4倍です。 一方で、自分に何が期待されているかを明確に知っている従業員は、全体の約半分しかいません。
「わからなければ聞いて」は期待の伝達ではありません。 聞くべきことがわからないのが新人だからです。
期待を言わない上司は、評価だけを言う上司になる。
▶実践法 ・初週のうちに「3ヶ月後にこれができていれば合格」を1つだけ文章にして渡す ・そのメモを本人と上司が両方持ち、月1回同じメモを見ながら話す
③上司以外に、聞きやすい相手を1人つけている
新人が戦力になる職場は、質問の窓口を上司だけにしません。 上司ではない先輩を「相談相手」として最初から決めています。
Microsoftは2019年、600人の新人を対象にした「バディ制度」の実験結果を公表しました。 バディとは、上司でも指導係でもない、質問を受け止めるだけの先輩です。
最初の90日でバディと1回でも会った新人の56%が「早く戦力になれた」と答えました。 2〜3回会うと73%。4〜8回で86%。8回を超えると97%です。 会う回数が増えるほど、数字が上がっていきました。
バディがいる新人は、いない新人より受け入れへの満足度が90日時点で36%高くなっていました。
新人が上司に聞けないのは、遠慮ではありません。 「こんなことも知らないのか」と評価されるのが怖いからです。 評価と無関係な相手がいると、質問の数が増える。 質問の数が増えた分だけ、戦力になるのが早くなる。
上司は評価する人。バディは聞ける人。
▶実践法 ・入社と同時に、上司ではない先輩を1人「何でも聞いていい人」として本人に紹介する ・バディには「週1回、5分だけ声をかけて」とだけ頼む。教える必要はない
④3ヶ月を「終わり」ではなく「点検日の集まり」にしている
新人が戦力になる職場は、試用期間の最終日だけを見ていません。 途中に、点検日を置いています。
Gallupによると、新人が本来の力を出せるようになるまで、平均でおよそ12ヶ月かかります。 それなのに多くの職場の受け入れは、初週で終わります。 Gallupはこれを「受け入れ期間が短すぎる」という典型的な失敗として挙げています。
Googleがボックのメールで上司に求めた5つの行動の1つは、「半年間、月1回の面談を入れる」でした。 立ち上がりを1回のイベントではなく、期間として扱っている。
3ヶ月放置して最終日に「どうだった?」と聞く職場と、 2週目・4週目・8週目に点検日を置く職場では、同じ90日でも中身が違います。
ズレは最終日に発覚するのではなく、2週目に発覚した方がいい。 2週目のズレは直せる。12週目のズレは、もう「合わなかった」になっている。
1回の面談で判断するのではなく、複数の点検で育てる。
▶実践法 ・入社日に、2週目・1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月の点検日をカレンダーに先に入れてしまう ・点検日の質問は毎回同じ2つ。「今できるようになったこと」「まだ聞けていないこと」
⑤最初の仕事に、小さく確実な成果を仕込んでいる
新人が戦力になる職場は、最初の仕事を「大きな案件の手伝い」にしません。 小さくても、本人の名前で終わる仕事を先に渡します。
ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ワトキンスは、新しい役割に就いた人が周囲に貢献し始めるまでの期間を調べました。 著書『The First 90 Days』(※新任者向けの定番書)によれば、その損益分岐点は平均で6.2ヶ月です。 それまでは、組織にとって新人は投資です。
ワトキンスがこの期間を縮める鍵として挙げたのが「早期の小さな成果」でした。 周囲が「この人は仕事をする」と認識する最初の材料になるからです。
前回の記事で紹介したアマビールの研究も同じことを示していました。 人は自分が前に進んでいると感じた日に、最もやる気が高い。
大きな案件の手伝いは、終わりが本人に見えません。 自分の名前で終わる小さな仕事は、成果が本人に見える。 見えた成果が、次の仕事を引き受ける力になる。
大きな仕事の端は成果にならない。小さな仕事の全部は成果になる。
▶実践法 ・最初の2週間で終わる、本人が一人で完結できる仕事を1つ用意して渡す ・終わったら「これは君の仕事だった」と、周囲のいる場所で名前をつけて言う
まとめ
新人が戦力になるかどうかを決めていたのは、新人の資質ではなく最初の90日の設計でした。
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初日に本人の話をさせる — 1時間変えただけで、離職が32%減った
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初週に期待を言葉にする — 上司へのメール1通で、立ち上がりが25%早まった
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上司以外に聞ける人をつける — 8回以上会えば、97%が「早く戦力になれた」
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3ヶ月に点検日を置く — 本来の力が出るまで平均12ヶ月かかる
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小さな成果を先に仕込む — 損益分岐点は平均6.2ヶ月。縮めるのは早期の成果
気づいたでしょうか。 この5つに、採用予算も研修施設も必要なものは1つもありません。
新人は、選んだ時点で決まっていません。 新人は、最初の90日で決まります。
新人の資質は、入社前に決まっている。 最初の90日は、今日から設計できる。





