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【制作スタッフインタビュー第5回】 なぜいま『彼方から』をアニメ化するのか

1991年から2002年にかけて『LaLa』(白泉社)で連載された異世界ファンタジーマンガの傑作『彼方から』。連載開始から約35年が経った今でも多くのファンに愛される本作が、ついにTVアニメ化を果たす。

そこで今回は本作のアニメ化に携わる監督・阿部記之氏、プロデューサー・吉田雄哉氏、シリーズ構成・たかすぎ梨香氏、キャラクターデザイン・安彦英二氏の4名にインタビューを実施。原作に対する想いやアニメ制作の裏側について、さまざまな目線から語ってもらった。

最終回となる第5回では、令和のいま『彼方から』をアニメ化する意義についてあらためて制作陣に尋ねている。そこで話題にのぼったのは、時代的な感覚の違いや、現代の異世界ファンタジーとの違いだ。

主人公の典子はどこにでもいる平凡な女子高生で、特殊な力は何も持っていない。異世界で無双するどころか、一人で生きていくことすら難しい。しかしその一方、彼女の心にはまったく別の種類の“強さ”が秘められていて、周囲の人々に大きな影響を与えていく……。『彼方から』の魅力の核となる部分は、間違いなくいまの時代にも通じるはずだ。

そのほかインタビューでは、原作ファンに向けたメッセージや、新規の視聴者に対するアピールポイントについても語られている。ある意味これまでの回を総括するような内容になっているので、あらためてアニメスタッフたちの熱意と原作への愛情を感じ取ってほしい。


◯令和に『彼方から』をアニメ化する意義とは? 現代と異なる感覚を楽しむ

──『彼方から』は異世界ファンタジーの金字塔として有名な作品ですが、すでに連載開始から35年の時が経っています。なぜいまこの時代に本作を蘇らせるのか、そして現代の視聴者にどんなことを伝えたいのか。アニメ化の意義について、率直な想いを伺いたいです。

阿部:アニメ化の意義については視聴者の方に委ねたいのですが、原作の良いところをちゃんと活かしたいと考えています。一番難しいのは、発表から30年くらい経っている作品なので、どうしても今の感覚とは違う部分が出てくるというところですね。

一応、今作では時代設定を現代にさせてもらいました。ただ、現代風のキャラクターに落とし込んでいくと原作の持ち味が薄くなってしまうので、基本的にセリフなどは原作に忠実になるよう心掛けています。今の視聴者に伝わるよう、多少表現の仕方は考えつつも、原作の良さを伝えられるよう頑張っています。

たとえば男女関係の描き方について言えば、今作には「男の子が女の子を守る」という部分があると思います。これは現代のフラットな関係性の描き方とは、ちょっと違いますよね。いまの若い子には「お父さんお母さんの時代はこんな感じだったのかもしれない、これはこれで素敵だな」という風に、感覚の違いを楽しんでもらえるといいなと思います。


◯自分のなかの“少女心”を解き放つ! 原作ファンや新規層に伝えたいメッセージ

──阿部監督としては、本作の注目ポイントはどんなところにあると思いますか?

阿部:一番注目してほしいのは、典子とイザークの関係が育っていくところですね。シナリオにしてコンテにして、声を入れて……とアニメを作っていくうちに、2人の信頼感が少しずつ強くなっているように感じられました。

だからアニメを観た人にも、そうした部分を伝えたいと思っています。そこが成功すれば、僕らとしてはやってよかったなという感じですね。

──ターゲット層という意味では、本作をどういった方々に届けたいと考えていますか?

吉田:女性にかぎらず、アクションファンタジーというジャンルが好きな方、あとはやはり原作を愛してくださっているファンの方に観ていただけたら嬉しいなと思います。

──原作ファンの方に向けて、「ここを楽しみにしていてほしい」というポイントがあれば教えてください。

たかすぎ:先ほど監督も仰っていましたが、声優の方々に新しい息を吹き込んでいただいたおかげで、本当に素敵な仕上がりになっていると感じます。それにシナリオ面でも、ひかわ先生とご相談を重ねたので、原作ファンの方にもご納得いただけるのではないかと思っています。

新しい方にも食わず嫌いされず観ていただいて、「こういう世界もあるんだな」と思っていただけるといいですね。いまの異世界作品は復讐ものだったり、スキルで乗りきったりするものが多いと思うのですが、今作は「生きるとは」みたいなテーマを丁寧に描いていく作品なので、そこを楽しんでもらえれば。

──色々とお話を伺うなかで、テーマ性やシナリオのこだわりはとてもよく伝わってきました。ではキャラクターデザインや作画といった面に関して、原作ファンにアピールしたいところはありますか?

安彦:今まで言ったことの繰り返しになってしまうのですが、やっぱりイザークと典子ですかね。2人の表情に尽きるかなと思います。

吉田:ひかわ先生の秀逸な絵を現代のアニメーションでそのまま動かすことはテクニカル面で難しいのですが、原作ファンに少しでも納得いただけるよう安彦さんには大変頑張って作画いただいております。アニメだとこうなるのかという目線で楽しんでもらえると嬉しい限りです。

──ひかわ先生と密にコミュニケーションを取りながら制作を進めていることは、ひしひしと伝わってきます。1人の原作ファンとしても、完成したアニメを見るのが今から楽しみです。それでは逆に原作をまだ読んだことがない、初見の視聴者に対してのアピールポイントは何かありますか?

吉田:『彼方から』は昨今の異世界転生アニメとは異なり、レベルやチートスキルがあるわけではなく、ある意味王道の異世界アクションファンタジーです。異世界転生の原点と言っても過言じゃない作品なので、普段から類似作品を観ている方々にも、ぜひ届いたら嬉しいなと思いますね。

──最後にまとめとして、この記事を読む人に向けたメッセージを一言ずつお願いします。

吉田:主題歌も含めて、とても格好良く仕上がっています。みなさまが納得のいくものをお届けできるよう頑張っているので、ぜひ楽しみにして待っていてください!

阿部:典子とイザークの関係はいまのスタンダードとは違うところがあるので、懐かしくもあり斬新に見えるかもしれません。2人がお互いをすごく想い合っているという部分が、視聴者の心に届くようにしたいと思っているので、その辺りを楽しんでいただけたら嬉しいですね。

安彦:原作ファンの方にはもちろん観ていただきたいですが、そこから他の世代にも広がって、より多くの方に見ていただけたらいいなと思います。

たかすぎ:私は宝塚歌劇団が好きなのですが、宝塚って初めて観る人も自分のなかにある少女の心に響いたりするみたいなんですね。本作も性別や年齢を問わず、自分のなかの“少女心”を見つけるきっかけになってほしいです。

──今回のインタビューを通して、制作陣がどんな姿勢で『彼方から』のアニメ化に向き合っているのか、はっきりと示すことができたと思います。原作ファンの方々にも、きっとその想いは伝わっているのではないでしょうか。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

全文完
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