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ポピュリスト右翼に対抗するには

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🇬🇧首相アンディ・バーナムが好調だ。8月の就任以来、新規の政策を次々発表し、労働党の支持率を回復させ、ポピュリスト反移民政党リフォームUKに対抗している。最新の総選挙予想では、労働党が政権を維持しリフォームは第三政党になるとされている。バーナムは何が違い、どうやってポピュリスト右翼に立ち向かっているのか。

ファラージ人気

まず、イギリスでなぜナイジェル・ファラージ率いるリフォームが支持を伸ばしたのか。ファラージの手法は常にシンプルで、「今の生活苦しいだろ?キツいだろ?イギリスが変わっちゃっただろ?わかるよ。見ろ、あいつらのせいだ」がメッセージだ。現状に憤る有権者の怒りを移民難民に向ける。Brexitもこれで勝ったし、リフォームも全く同じだ。

文章配图

Brexit時にファラージのストーリーを買った人の例

ファラージはこのシンプルなストーリーを反エリートのレトリックを交えて語る。「保守党労働党のエリートはお前らなんか気にかけない。そのエリートが移民を入れてきた。その移民が生活を脅かしている。奴らを追い出せ」。敵を明確にし、怒りを煽る感情ベースの政治だ。産業の空洞化、地元経済の不振、公共サービス削減で喘ぐ地方都市の有権者にこのストーリーが刺さった。

前首相スターマーはこれに乗っかり、「我々もリフォーム同様移民にタフである」という姿勢を見せたが勝負にならず、支持率は急降下した。ポピュリスト右翼に対抗し票を取り戻すために同じ土俵に乗る、という動きは一見理に適っているが、実際は右翼を移民問題で出し抜くことはほぼ不可能だ。

新しいストーリー

バーナムがやったことは何かと言うと、まず現状がダメで変わらなければならないと認めた上で、ポピュリスト右翼とは違うストーリーを提示したことだ。サッチャリズムの否定である。

イギリス衰退は(移民のせいではなく)サッチャー以降の公的サービスの民営化、産業解体、中央集権化、市場経済優先が原因で、その結果、地方産業は空洞化、生活費は上がり、公的サービスは悪化した。これらの問題への対策として、エネルギーや水道、鉄道の再国営化、地方分権、地場産業の保護等を打ち出している。

嵌入推文(联网查看)

つまり、ファラージの政治は

イギリス崩壊→移民のせい→怒りによる政治動員

バーナムの政治は

イギリス衰退→サッチャリズム否定→政策による解決

イギリスの現状がダメという出発点は同じだが、その原因の診断、そして問題への対応が明確に異なる。

伝える力

バーナムが優れているのはこれらの政策を分かりやすい言葉で伝えることだ。例えば地場産業保護政策としてパブへの事業税を下げたが、そのメッセージを「この政府はあなたの地元のパブの味方です」と伝えた。電気料金の付加価値税撤廃は「人々が一息つけるように」、バス運賃上限2ポンドは「安価な日常生活」と、何をやったかのアピールではなく、政策が人々の生活にどういう意味を持つかを伝え、有権者の感情、特に安心感に訴え掛けている。受け手へのインパクト重視のコミュニケーションスタイルだ。

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バス料金上限£2の発表。「これでみんなが毎日少しづつお金を節約することができる」と結んでいる。

つまりバーナムは感情に訴えるポピュリスト的なコミュニケーションと、従来の中道左派政策を組み合わせている。ポピュリスト右翼の土俵である移民問題には乗らずに、左派の得意とする生活支援政策のパッケージを、安心感に訴える言葉で包んで有権者に差し出している。相手に有利な戦場で打ち負かそうとするのではなく、自分の得意な領域に引っ張ってきている。

バーナムの分かりやすい具体的なインパクトを伝えるコミュニケーションは明らかに意図的だし、政策のインパクトを広く浸透させる効果がある。またこうすることで、「イギリスは崩壊している」という批判に、「だから私たちは実際にパブを助け、バスや電気料金を下げ、商店街を盛り上げているんです」と言い返すことが可能になる。

ソリューション型政治

リフォームの政治的コミュニケーションがイギリス衰退と移民の結びつけによる怒りの誘導だとしたら、バーナムは問題に対して具体的な解決策を提示し、それによる改善と信頼回復、安心感をもたらすソリューション型と言える。

この戦略のポイントは、政治を怒りの発散の術ではなく、問題解決のツールに変えていくことにある。前者の政治はポピュリスト右翼の独壇場だが、後者は違う。ポピュリスト右翼は問題解決は眼中に無いからだ。

バーナムの新しいストーリー、そしてそれに対する生活支援と地方再生政策は今のところ有権者に受けがいいし、安心感に訴えるコミュニケーションも効果的だ。だが一方で移民は有権者の大きな関心であり、政治の議論が再び移民難民問題に集中すると、リフォームの勢いがぶり返す可能性もある。バーナムのアキレス腱とも言える政治課題だ。そこで政治の議論をコントロールするためにバーナムが打った次の一手がイギリスのEU再加盟だ。

先手を打ち政治の議論をコントロール

スターマー下で顕著だった問題は、リフォームが移民で政治の議論を引っ張り、労働党はそれに後手後手に回っていた。一方でバーナムは物価上昇や生活苦への対策を矢継ぎ早に打ちだし論争をリードし、さらにEU再加盟というここ10年のイギリスで誰もが議論したかったことを政治的オプションに持ってきた。英語で言うagenda setting能力に長けているのだ。

ご存知の通りイギリスのBrexitはほぼ全ての面で失敗で、有権者の6割近くがEU再加盟を望んでいる。バーナムはこれを政治の選択肢にすると明言したことで、今後数年の政治の議論を主導することが可能になった。バーナム自身も世論同様にEU再加盟を望み、一方でEU離脱に果たしたファラージの役割を攻撃材料にすることも容易だ。

バーナムが賢いのは、有権者に「EUとの関係は色々なオプションがある。そこから議論して何がイギリスに一番良いか決めよう」という開かれたスタンスを示したことだ。この姿勢なら「Brexitを覆そうとしている」という批判もかわせるし、何よりEU再加盟が有権者の重要な関心事になり、ファラージの得意な移民問題からフォーカスを逸らすことが可能になる。移民難民問題も否応無くEU再加盟の議論の一部になるが、EU離脱の影響で移民も難民も増えたという厳然たる事実があるため、ファラージの後手に回ることも避けられるだろう。

ポピュリスト右翼とどう戦うか

ポピュリスト右翼の強みは、現状に不満と憤りを抱く有権者の怒りを移民に向けさせるストーリーを作り出し、感情を煽るコミュニケーションにより、怒りを政治的に動員することにある。スターマー下の労働党はこれに対して後手後手になり、支持を失い続けてきた。

バーナムがやっていることは、有権者の不満と憤りをいったん受け止め(バーナムは頻繁に "it's not good enough, so we are doing things differently" と言う)、イギリス衰退の理由はサッチャリズムであるというストーリーを示し、物価高や生活苦を軽減する政策を有権者視点のコミュニケーションで伝えて支持を広げている。ファラージの得意とする移民問題で争うのではなく、有権者に身近なパブ、バス、光熱費、商店街などを変える政策により問題解決の政治を打ち出している。多くの有権者が求めていたEU再加盟を選択肢に戻し、先手を打ち相手を自分の得意な領域に引き込んで、政治の議論をコントロールしようとしている。

移民で戦わない

バーナムが理解していることは、ポピュリスト右翼の支持に回った有権者を取り戻すには、必ずしも移民を争点にする必要はない、ということだ。

ポピュリスト右翼支持層の反移民感情は地方経済の疲弊、産業空洞化、インフラと公共サービス劣化、将来への不安、過去への憧憬などが複雑に絡み合った結果として表出したもので、ただ単に反移民だからリフォーム支持に回ったわけではない、とバーナムは理解している。反移民感情に直接対処するのではなく、その背後にある地方社会の疲弊や公共サービス劣化の解決を優先する理由がここにある。

次のイギリス総選挙は2029年までに行われる。まだ先は長く、ファラージが息を吹き返す、あるいはバーナムが自ら転けることも十分考えられるが、今のところは、バーナム政権の船出は好調に見える。

全文完
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